採用担当の教科書

新卒採用は、ホントに悪者なのか。日本で受け入れられ続ける仕組みの歴史

第一回:新卒採用は、ホントに悪者なのか。日本で受け入れられ続ける仕組みの歴史
<シリーズ:新卒採用って、ホントのところ。>

新卒採用の歴史

はじめに

はじめまして。コラム連載を担当させていただくことになりました、天池知子です。
採用コンサルティング会社に新卒入社した私は、仕事だけでなくボランティアも通して、様々に新卒採用の側面を見てきました。
「企業と人が出会う」仕組みの一つである、新卒採用。賛否両論ありますが「新卒採用」という仕組みは日本に広く浸透し、しばらくはなくならないことでしょう。過去の歴史や現在のデータと照らし合わせ、どうやったらもっといい関係性が増えていくのか提示できるコラムになれたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

新卒採用は、ホントに悪者なのか。

「新卒一括採用なんてやめてしまえ!」
「今の採用の仕組みはおかしい、ミスマッチを生んでいる」
そんな論調で毎年のように語られる、『新卒一括採用』。今やひとつのニュースのジャンル、興味関心のトピックスになっています。

SNSやインターネット上で見受けられるのは、採用担当者や就活生など中心の当事者だけでなく、企業経営者・現場社員や大学関係者といった周辺関係者……だけにとどまらない、様々な立場の方からあがる疑問の声。
大学進学率が5割を超えた今、人生のどこかで新卒採用について接する機会のある人が増え、より多くの関心を引くのでしょう。

物事を知るにはその成り立ちから、というのは、一つの定石です。
なぜ、いまの日本の新卒採用文化がうまれ、どうしてこのように広く受け入れられているのか。そして、これからどのように変貌していくのか。今日はそこから紐解いていきたいと思います。

そもそも、「新卒採用」って、何だ。

いつごろ、なぜ、あなたの会社で新卒採用は始まったのでしょうか?
自社の新卒採用に携わる場合、そこからスタートするのもいいでしょう。
その事情は会社ごとで異なるかと思いますので、ここでは「新卒採用」の歴史を見てまいります。

大正時代から、一括ポテンシャル採用

「新卒採用」の歴史を遡ると、明治・大正時代まで遡ります。
当時の大学といえば、旧帝大。将来は官僚になるためのエリートで、官公庁または関係財閥に就職するものでした。
しかし、第一次世界大戦の好景気、企業としては将来幹部候補になる優秀な社員を確保したい。
そこで実施されたのが、「高等小学校を出たばかりの優秀な若者」を「多数採用」し、「社内で育成する」ようになったのです。今の新卒採用に通じる、ポテンシャル採用の起源はここにありました。

昭和だって、早期就活攻防戦

大正〜昭和と時代は移り変わり大戦終了後、大学や学生数だけでなく企業数も増加していった日本。
企業の業績発展を見込んだ年功序列賃金制度が整い、若手労働者を安く大量に採用できる「新卒一括採用」とセットで企業に定着していきます。

好景気に押されて企業は大学卒業後の学生採用に積極的で、「青田買い」という早期採用が問題にもなりました。あまりの勢いに、採用の早期化は学業に支障が出るとの訴えかけが。
そこで、1952年に文部省から就職期日などが指定された「就職協定」の通達。実質は協定違反をしても新聞に社名が掲載される程度のペナルティだったため違反する企業も見受けられましたが、1996年に廃止されるまで求人開始次期や内定解禁のタイミングの一つの目安となっていました。

不景気でも加速する、早期採用活動

バブルがはじけた後、企業はリストラや雇用縮小により活動を維持しようと考えました。
就職氷河期と呼ばれる時期1990年以降、大学卒業後も正社員で就職が決まらない若手求職者が増加しました。
企業は少ない採用人数と少ない予算の中、少数精鋭の学生を採用しようと試行錯誤。1996年の就職協定廃止後には採用活動が早期化する傾向が強まりました。

就職情報が紙からインターネットに変化し、早期から学生と出会うチャンネルも豊かになってきました。
即戦力を求めて優秀な学生には年棒制で採用をする、SNSで直接学生とコミュニケーションをとり採用するなど、従来の一括採用とは違った取り組みも出てくるようになりました。

倫理憲章により、変化する採用時期

学生の学業を圧迫する早期採用活動に対し、廃止された就職協定に変わって、経団連が採用に関する倫理憲章を見直しました。
2013年卒の学生から採用に関わる広報活動を従来の10月解禁から12月解禁に遅らせることが実現化。さらに2016年卒からは、広報を3月解禁、採用を8月解禁となりました。それに合わせて大手の就活情報メディア・大手企業が就活解禁次期を変化させていきます。
2013年卒採用での変化からの学びを、2016年卒採用への計画にどう生かすかが、これからの採用の変化のヒントになりそうです。

柔軟に変化してきた、新卒採用のカタチ

さて、時代の変化に伴って「新卒採用」の変化を見てきました。
新卒採用に対する問題意識は、今も昔もあちこちから声が上がり、企業がそれに対して柔軟に変化を続けてきたことがわかります。

「新卒採用」とは社会の景気や雇用問題とは切って離せないもの。
だからこそ多くの人の関心を集める話題なのでしょうが、ただ新卒採用だけをバッシングするのは、根本的な問題解決につながりません。

もちろんこのような大きな課題に対して、いち企業や業界でできることは限られています。
まずは現実的な課題点を把握して、どのような新卒採用ならば企業利益をもたらしつつ、社会問題を解決できるのか、というのがスタート地点ではないでしょうか。

本当の課題点と、変化すべきポイントは

平成23年の内閣府の若者雇用関係の資料を参照してみます。
参照:若者雇用を取り巻く現状と問題-内閣府
新卒採用が浸透した結果の社会影響と、生じている問題が簡潔に述べられているので引用します。

新卒一括採用の社会影響

若者の失業率が諸外国に比べて低いのは、新卒一括採用の慣習による。
大卒・高卒の就職率は、9割超という水準。

現在の課題点

もっとも、大卒・高卒とも、中退・一時的な仕事・早期離職も含めると、高卒の3人に2人、大卒の2人に1人(一定の前提条件を基に推計)が、教育から雇用へと円滑に接続できていない。

日本の低い若者失業率は、経済成長と共に新卒採用が多くの企業で浸透していった成果。
けれども、半分以上の若手求職者が、企業に雇用されることにうまく行っていないことが現実。

二人に一人、あなたの身近、もしくは自分自身が、就職してうまくいかなかった。
多くの人が身近に感じる問題だからこそ、疑問や不満が噴出し「新卒採用」がすべての原因である、と、感情的に攻撃されるのでしょう。

他にもこの資料では、現在の問題点について、キャリア教育や中小企業の求人や雇用のミスマッチなどあげられています。
新卒採用、という雇用慣習のよさを受け入れながら、現在の課題点から紐解いていくのが建設的ではないでしょうか。

今回追った新卒採用の歴史は、主に世の中の流れと採用時期の変化でした。次回は企業と学生が出会う接点の変化について追っていきます。
第二回「新卒採用も、時代の波に流されて。 メディアの変化とコミュニケーションの本質」に続きます。

<プロフィール>

ライター 天池知子(あまいけともこ)

2011年株式会社カケハシ スカイソリューションズ入社。
2012年2月就活サイト「ミートボウル」の立ち上げ・企画・運営に携わり、学生広報を担当する。
2012年11月〜東京・新宿にある就活生コミュニティスペース「就トモCafe」の社会人バリスタとしてボランティアで運営に携わる。
ソーシャルメディアとリアルイベントの両軸で、数多くの学生と接触。
自身もTwitterがきっかけで採用されたことから、採用メディアの変化と活用についての研究と実践を繰り返している。現在はフリーランスとしてメディア運営・ライティングに携わる。

天池知子

天池知子

2011年株式会社カケハシ スカイソリューションズ入社。 就活サイト「ミートボウル」の立ち上げ運営に携わり、学生広報を担当。 2012年「就トモCafe」の社会人バリスタとしてボランティアで運営。 現在はフリーランスとしてメディア運営・ライティングに携わる。

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